フリーランス通訳(翻訳)者として生きること

会社を辞め、OL生活に終止符を打ち、フリーランスの世界に身を置いたあの日から、早くも5,6年の歳月が経ちました。この歳月を振り返ると、それこそ失敗と挫折に満ちたもので、仮にそこにささやかな成功があったとしても、それはきっと語るに値しないものだと、このお題を頂いた時に思いました。しかし、幸いなことに、この5,6年間は何人かの素敵なフリーランス通訳(翻訳)者と一緒にお仕事をさせて頂き、いろんなことを学ばせて頂きました。自分の学んだことを素直に伝えていく、という意味ならば、いくらか私でもお話しできることがあるかもしれません。そして、それをお伝えしてみたいと思うようになりました。

フリーランスの魅力

もしも誰かにフリーランスを辞められない理由を教えろ、と言われたら、私の場合、次のような類のものを列挙し始めるかもしれません。平日の午前中に映画館を独り占めしてゆっくりと最新の洋画を鑑賞できるとか、お昼の時間帯のがらんとしたトレーニングルームとコーチを独り占めしてジムで汗を流したいとか、ひいては格安なエアチケットで甘い花の香りの漂う熱帯島ののんびりとした時間を独り占めしてしまうとか。

厳しい自己規範

私から見たフリーランス通訳(翻訳)者たちは、皆一種の自己規範みたいなものを確立しているように思われます。その規範をクリアするために自己管理や自主トレに励んだり、万全を期して必要な準備をしたり、われを忘れて集中したり、いつでも経験や教訓を生かせるように心がけたりしています。実に多岐に渡る業種のお客様からのご依頼に応えるために、見えないところの努力は見えるところの努力と同じように不可欠になりますし、経験や教訓を思い起こす作業は、熱帯島でリフレッシュした後のモードの切り替えには特に重要になります。要は組織や所属という保護の傘を捨てて、社会の雨風に容赦なく晒されたたフリーランスにとっては、自己規範こそ最も確かな身の拠りどころになると言うわけです。そして、それを日ごろから磨きを掛けている姿を見ていると、皆行く行くは「自己規範書」みたいなものまで完成させてしまうのではないかと、時々思います。

孤独を楽しむ

フリーランスをやっていく上でもう一つ重要な素質は、「一人で何かをこつこつとやることから楽しさを見出す」こと、言わば「孤独を楽しむ」ことだと思われます。特に翻訳の作業というのは、仮にウォーミングアップから山を一気に駆け上る全力疾走の段階に至るまでのプロセスがスリルに満ちたものであるにしても、また、砂から黄金の一片を探し出すようにミスを発見し訂正していくという仕上げの作業が達成感を十分満たすものであるにしても、一人でパソコンに向かい、こつこつ黙々と行う孤独な作業であることには変わりがありません。その時は、楽しそうにしている他人の幸せから目をそらし、自分に課せられたワークに真正面から向き合うだけでなく、こつこつとやることから喜びを感じ、脳内をドパミンで満たすことも重要になるかもしれません。

私のフリーランスとしての道のりは、まだまだ長いかもしれません。