「来るもの拒まず」で見えてきたこと。

「コラムを書いてくれませんか?」毛さんに言われた時、コラムを書いたことがないし、第一何を書いていいのかわからないと思いながらも、ほぼ即答で引き受けてしまった。これは仕事でも同じだけれど、よほど難しい難題を突き付けられる時を除いて、私はお願いされたらあまり断ることがない。そして、引き受けてから、さてどうしよう…と悩むわけで、現に今も悩みながら文章を書いている。

来るもの拒まずのスタンスで通訳の仕事を始めたのは、30歳になって通訳業を始めたから。つまり、断る余裕なんてなかったというのが本当のところなのだけれど、あれから15年、受けては悩みを繰り返してきて、最近ようやくそのスタンスが間違っていなかったと思うようになってきた。振り返ってみると、自分が全く知らない世界の、しかもトップと言われている人たちの発言する言葉に触れてこられたことは、私の小さな人生を大いに豊かなものにしてくれたと思う。その中には、日本で数日通訳をさせてもらっただけなのに、以来何年も友人として付き合ってくれている人もいる。もし私が通訳という仕事をしていなかったら、間違なく私の人生はかなりモノトーンだったに違いないし、少なくとも今ほど面白くなかっただろうなと想像する。

これまで経験したことのない分野に携わることになる時、今でもものすごく緊張する。ともすれば、受けなければよかったとウジウジ弱腰にもなる。でも、その時に自分に言い聞かせる。“これを乗り越えたら、きっと新しいことを発見するはず”と。実際今では、通訳業を介して出会った様々な人たちのおかげで、オペラのフランス語言語指導、ベルギー観光局の仕事、イベントの司会業、TVのコメンテーターと仕事の内容も随分とにぎやかになっていて、結構楽しく毎日を過ごしている。

これから通訳業をやろうとしている若い人たち、あるいは、自分がどんな道を進んでいけばいいのか悩んでいる人たちに、是非言いたい。とにかくやってみようよ!と。冷や汗をかいた分、苦しんだ分、必ず面白いことが待っているから。

読後感

パスカルさんの前にいる時は、こちらは消えたいぐらい、その華やかさに圧倒されます。そして完璧なバイリンガル。ワインを片手に語る姿はすぐみんなを虜にしてしまいます。ですが、このエッセイからパスカルさんの葛藤を垣間見た気がします。

美貌で万能でポジティブに邁進するパスカルさんと、もう一人の不安で震える小さな女の子との戦い。

そうです、私たち通訳者は常に自分の不安、手に負えないのではないかという恐怖と戦いながら、前進しているのです。頷きながらエッセイを読み、パスカルさんが一層輝いて見えました。